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■ コラム目次
AES3ID-1995 / SMPTE-276M
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オーディオ・トランスの話
続:オーディオ・トランスの話

コラム: オーディオ・トランスの話

このコラムは、社内セミナー用の原稿を加筆・修正したものであり、著作権は当社にあります。著作権を侵害するような無断転載などはご遠慮ください。またここに記述された内容に起因する一切の事象に対して、当社は責任を負うものではありません。内容に関するご質問やお問い合わせなどにはお答え致しかねますのでご了承ください。

オーディオ・トランスは、最近はほとんど使われなくなったこともあって、実務の参考になるような書籍もほとんどありません。またその取扱いについても知っている人には当たり前のことでも、知らない人にはなかなか難しいものです。

ここではオーディオ・トランスの扱いのうち、断線チェックと消磁について書いておきます。



 断線しているかどうかを調べるには


オーディオ・トランスが断線しているかどうかを調べる時に、ついうっかりやってしまいそうになるのがテスターの抵抗レンジあるいは導通レンジで測ることです。しかしこれは絶対にやってはいけません。

テスターの抵抗レンジや導通レンジは、被測定物に DC(直流)を流して測定します。オーディオ・トランスは鉄芯(コア)にコイルを巻いてあるわけですから、このコイルに DCを流すということは、小学生のときに理科の実験でやった『電磁石』を作ることと同じです。

その結果、万が一本当にコイルが断線していればよい(?)のですが、もし正常なトランスだった時はトランスの鉄芯が帯磁してしまい、本来の性能が発揮できなくなります。音を聴いてみればわかりますが、鉄芯が帯磁したトランスでは高音域が著しく減衰してくぐもった音になります。

オーディオ・トランスの断線を調べるには、交流信号を使わなくてはいけません。面倒くさがらずにオーディオ・アナライザで調べるか、あるいはオーディオ・オシレータ(発振器)とオシロスコープあるいは交流電圧計で調べましょう。

そのトランスの規定レベル以下の信号を 1次側から入力し、2次側に所定レベルの信号が出てきていることを確認します。もしレベルが著しく低い、あるいは全く出力されなければ、巻線が断線しています。



 オーディオ・トランスを帯磁させてしまったら


うっかりオーディオ・トランスをテスターで測って帯磁させてしまった場合は、消磁しなくてはなりません。また機器に組み込まれたトランスでも、長い間使っているうちに電源の入/切時のオフセット電圧や、回路の漏れ電流などでトランスに直流が流れ、帯磁してしまう場合もあります。こういう時も消磁してやると音が見違えるように良くなります。特にトランスを使っているマイクロフォン・ヘッドアンプ等では効果が顕著です。ケーブルの素材やコンデンサーに凝る前に、基本的なことで音質改善が図れます。

オーディオ・トランスの消磁は、手元にオーディオ発振器があれば簡単に行えます。この場合、サイン波が出力できて、出力レベルが連続可変で 0vまで絞り込めるものが必要です。

手順を間違えなければ、やりかたは簡単です。トランス単体を消磁してみましょう。

◇オーディオ発振器の出力を 1kHzのサイン波にします。出力レベルをそのトランスの飽和レベルのおよそ倍くらいにセットしてトランスの1次側に入力します。トランスの 2次側は開放でかまいません。

◇5秒ほどそのままにして、ゆっくりと、30秒ほどかけて発振器の出力を下げてゆきます。この時、できるだけ滑らかに出力レベルを下げていくことが肝心です。途中で止めたり急激に下げたりすると、余計に帯磁させかねません。

◇発振器の出力を 0vまで絞ったら完了です。完全に絞りきれないと消磁しきれなかったり、逆に悪化させることもありますので注意してください。

この方法でマイクロフォン・ヘッドアンプも同様に消磁することができます。ミキシング・コンソールのヘッドアンプなら、コンソールに付いているオシレータが使えます。もしオシレータの出力レベルが 0vまで絞れない場合は、チャンネル・フェーダを通すなどの工夫をしてみてください。

消磁器を使ってテープ・レコーダーのヘッドを消磁したり、テレビのプラウン管を消磁したことのある方なら「なぁんだ、同じやりかたじゃないか」とおわかりでしょう。つまり過大入力によって、帯磁した鉄芯をいったん飽和レベルまで上げて、そこから徐々に下げていくことで消磁することができるのです。

「マイクロフォン入力用のトランスにそんな過大電流を流して大丈夫か?」という疑問が沸きそうですが、この程度のレベルであれば全く問題はありません。

Gryphone Exorcistオーディオ機器やオーディオ・システム全体を消磁するには、グリフォンの『The Exorcist』(右写真)のような専用の消磁器を使うのがもっとも手軽です。これはプリ・アンプの入力からパワー・アンプのスピーカ・アウトまでの経路をトータルに消磁するためのものです。その効果は高く、聞き慣れた自宅のステレオ・セットやスタジオのミキシング・コンソールに使うと、あまりの音の違いに誰もが驚くほどです。

使い方は簡単で、プリ・アンプの AUX入力につないでスイッチを入れるだけで、約 30秒で消磁が完了します。出力レベルが高いので、ライン入力専用です。フォノ入力には使えません。

取扱い説明書では、パワー・アンプのボリュームは通常の聴取位置にしなさいと書いてあります。つまり消磁作業中はスピーカから大きな音が出るということです。耳を守るために「部屋の外に出ているように」薦めています。

(社内セミナー資料より)

追補:
この『The Exorcist』ですが、2013年現在、グリフォンの日本での代理店が無くなってしまい、国内では入手が難しくなってしまいました。出力されている信号は1kHzのサイン波で、-3.5dBuから30秒かけて徐々にレベルを下げていき、最後は無信号にしているだけです。同じ音源を作ってCDなどに記録しておけば、手軽に同じ効果が得られるはずです。

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