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AES3ID-1995 / SMPTE-276M
デジタル・オーディオ信号の伝送
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バランス/アンバランスの話
インピーダンスの話
オーディオ・トランスの話
続:オーディオ・トランスの話

コラム: インピーダンスの話

このコラムは、社内セミナー用の原稿を加筆・修正したものであり、著作権は当社にあります。 著作権を侵害するような無断転載などはご遠慮ください。またここに記述された内容に起因する一切の事象に対して、 当社は責任を負うものではありません。内容に関するご質問やお問い合わせなどにはお答え致しかねますのでご了承ください。

インピーダンス(Impedance)とは、『交流に対する抵抗値』のことです。普通の抵抗器では直流でも交流でも示す抵抗値はほとんど同じですが、コンデンサやコイルなどの部品は、周波数が変わると交流の通りにくさが変化します。コンデンサは直流抵抗は∞Ωですが、音声信号は通りますね。逆にコイルは、直流抵抗はほとんど0Ωですが、周波数の高い交流信号はほとんど通しません。抵抗とコンデンサ、コイルを組み合わせた回路では、回路全体の抵抗値は周波数によって複雑に変化します。

交流に対するコイルやコンデンサの抵抗分をリアクタンスといい、それぞれインダクタンスや静電容量から計算できることは、電気工事士や通信工事担任者資格を持っている方なら理解されているでしょう。

ここではインピーダンスについて、理論的なことではなく実務的な面を中心に話を進めます。

 600Ωとハイ・インピーダンス

我々が扱っている放送機器や音響/映像機器では、入力インピーダンスがどうとか、負荷インピーダンスがいくらかという問題が起こることがあります。

例えば入力インピーダンスが 600Ωとは、とりあえずその機器の入力コネクタが 600Ωの抵抗(R2)でグラウンドに落ちていると思えばいいのです。

その先(機器の内部)にどのような回路がつながっているかはわからなくてもとりあえず無視します。入力コネクタが不平衡(アンバランス)であれば、ホットとグラウンドの間に、平衡(バランス)であればホットとコールドの間に 600Ωの抵抗が付いているわけです。インピーダンスですから本来は周波数によって値が変わりますが、とりあえずこのように考えます。

逆に出力インピーダンス 600Ωというのは、例えばアンプの出力であれば、出力端子に 600Ωの抵抗(R1)が直列にくっついているわけです。

いま出力インピーダンス R1 = 600Ωのプリ・アンプ出力を、入力インピーダンス R2 = 600Ωのパワー・アンプの入力につないだとします。プリ・アンプ内部で生じた 2vの信号は、直列の 600Ω(R1)を通って、パワー・アンプの入力の 600Ω(R2)でグラウンドに落ちます。パワー・アンプ内部には、入力の 600Ω(R2)の両端に生じた電圧が送られます。つまりプリ・アンプ内部で生じた 2vは、2本の 600Ω(R1,R2)で 1/2に分圧され、1vだけがパワー・アンプ内部に送られるということになります。

これは映像(ビデオ)機器でも同じことがいえます。ビデオ機器は入出力インピーダンスが 75Ωと規定されています。またビデオ信号のレベルは 1vp-pです。いまビデオ・アンプを作って、出力インピーダンスを 75Ωにするために、75Ωの抵抗を出力に直列に入れました。相手の機器の入力インピーダンスはもちろん 75Ωです。相手に 1vp-pのビデオ信号を渡すためには、ビデオ・アンプの出力を、直列抵抗の前で 2vp-pにしなくてはなりません。理由はわかりますね。

1vp-p : p-p は peak-to-peak のことで、最大値から最小値までの電圧値。

 電力伝送と電圧伝送

話を音響機器に戻しましょう。昔の放送機器は入出力ともインピーダンス 600Ωというのが基本でした。そこから +4dBmという規準レベルも作られたのですが、現在では出力インピーダンス (R1) が数Ω〜数 10Ωと低く、入力インピーダンス (R2) が 10kΩ以上と高い、いわゆる「ロー出し/ハイ受け」の機器が主流になっています。

0dBmという値は、『 600Ωの負荷に 1mWを生じさせる電圧値』です。つまり電力伝送という考え方で、オーディオ帯域において(というかもともと電話の規格なのですが)もっとも電力損失(ロス)が少なくなるように線路インピーダンスから考慮して作られた基準です。今は電圧伝送で、もっとも電圧ロスが少なくなるようにと考えます。

  例えば出力インピーダンス (R1) が 20Ωのプリ・アンプを、入力インピーダンス (R2)が 50kΩのパワー・アンプにつないだとします。プリ・アンプ内部で生じた 10vの信号は、20Ωと 50kΩで分圧されてパワー・アンプ内部に入っていきます。計算すれば 9.996v、つまりほぼ 10vですから、600Ωラインのように電圧レベルが半分になってしまうような無駄がありません。

もう一つ、「ロー出し/ハイ受け」にはメリットがあります。1台のプリ・アンプの出力を、2台のパワー・アンプに分岐して送りたいとします。2台のパワー・アンプの入力をパラレル(並列)に接続すると、プリ・アンプからみたパワー・アンプ側のインピーダンスは 50kΩ÷ 2で 25kΩになってしまいます。するとプリ・アンプ内部で生じた 10vは、20Ωと 25kΩで分圧されることになります。計算すると 9.992v、やはりほぼ 10vのままで変化がありません。

600Ω機器の場合、接続は 1:1 が鉄則なので負荷をパラレルに接続することができません。どうしても分岐したい場合は分配アンプを使います。

出力インピーダンスが低く入力インピーダンスが高いというのは、負荷(この場合パワー・アンプ)が多少増えても、レベルを再調整しなくても済むというメリットがあります。


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 軽い負荷、重い負荷

さらに、ここが重要なのですが、回路設計者にとっては、ロー出し・ハイ受けはプリ・アンプの出力回路が小規模で済む、回路設計の自由度が上がるということもあります。

プリ・アンプ内部で生じた +10vは、約 50kΩ ( 50kΩ + 20Ω) の抵抗に流れることになります。流れる電流は 2mA(ミリ・アンペア)です。従ってプリ・アンプの出力回路では 2mW(ワット)の電力を考えればよいので、使用する抵抗も普通の 1/4w( = 250mW)タイプで十分ということになります。

ちなみに +4dBm規準のアンプで、最大出力が +20dBm程度とすると、そのときの電圧値は約 +12v。ここで引用した +10vという数値はそうありえない数値ではありません。

さてこれが 600Ω機器であったらどうでしょうか? パワー・アンプに +10v供給するために、プリ・アンプ内部では +20vを発生させています。プリ・アンプの出力回路から見た負荷は 600Ω+600Ωですから、流れる電流は 約16.7mAです。出力回路は 300mW以上の消費を考えなくてはなりませんから、放熱器や1/2wの抵抗器が必要になってきます。

このように入力インピーダンスが高いと、前段の機器の負担が小さくて済むので、現在のようなオペアンプ全盛の機器では一般的になっています。負荷インピーダンスが高いことを「負荷が軽い」といいます。逆に 600Ωのようにインピーダンスが低いと「負荷が重い」といいます。負荷インピーダンスが高いと、出力回路にあまり電流を流さなくて済むので「軽い」と表現します。逆に負荷インピーダンスが低いと、出力回路に多くの電流を流さなくてはなりません。電流が多く流れるほど多くの熱を発生しますから、素子の放熱も考えなくてはなりません。また出力段に電流ドライブ回路を追加したり、、あるいは電源回路から強化しなくてはなりません。「重い」と表現するのもわかると思います。

オペアンプは回路設計が楽で良いのですが、出力段が貧弱であまり大きな電流をとれないのが普通です。一般的な 4558タイプのオペアンプでは、負荷は 2kΩ以上になっています。つまり 4558の出力を 600Ω機器に直接つなぐわけにはいかないということです。600Ω負荷をドライブするには、それ用に出力回路を強化したタイプ( 5532/ 5534など)を使う必要があります。

音質的に気に入ったオペアンプでも、600Ω負荷の回路には使えない、という場合、それでもということならオペアンプの先にトランジスタで電流ブースター回路を足すという手もありますが、今度はトランジスタの音質が・・・となりかねません。部品選択の悩みどころです。

 ハイ・インピーダンスのデメリット

ロー出し/ハイ受け」は良いところだらけのようにも見えますが、実はそうでもありません。

600Ω受け渡しというのも、インピーダンス・マッチングという点では理想的であり、長距離伝送をしても信号の劣化が少ない、外来ノイズを拾いにくいなどのメリットもあります。またある程度電流が流れるので信号のやり取りが電力に近い形になり、いっそう劣化やノイズに強くなります。また接続が必ず 1:1なので、接続がわかりやすい、受け渡しレベルの計算が楽、といったこともあります。

逆にインピーダンスが高いとノイズを引きやすくなります。600Ωの抵抗を指でつまんでもほとんど影響がありませんが、1MΩの抵抗を指でつまむと盛大にハムを引きます。これはオームの法則そのままに、抵抗値が大きいほど小さなノイズ電流でも大きな電圧を生じるためです。 600Ωの抵抗に 1μAのノイズ電流が流れたとしても、生じるノイズ電圧は 600μvですが、1MΩの抵抗では 1vという、無視するにはあまりに大きい値になります。

プリアンプとパワーアンプが接続された状態では、線路インピーダンスそのものが下がるので、そこにノイズが飛び込むというのは少ないのですが、それでも 「ケーブルがアンテナになっている」 というトラブルが起こることがあります。600Ωラインではあまり聞いたことがありません。またインピーダンスが高い回路ほどグラウンドまわりの処理が難しくなり、それを誤るとノイズを拾いやすくなります。オーディオ機器の場合、入力インピーダンスは 10kΩ〜 50kΩというのが相場ですがそれなりの理由があるわけです。

実生活の環境では空中にはテレビやラジオの電波が飛び交い、室内では電灯線のハムや照明器具の調光ノイズなどがあふれている状態です。それらがどうやって機器に飛び込んでくるかわかりません。ノイズ対策としては、インピーダンスはなるべく低いほうが有利なのです。

 ヘッド・アンプのインピーダンス

マイクロフォンの信号を増幅するヘッド・アンプ( HA)の入力インピーダンスは、マイクロフォンの出力インピーダンスの 10倍以上で受けるように設計します。「インピーダンス・マッチング」を金科玉条にする人たちも、こればかりはマッチングをとってはいけません。

ちなみに出力インピーダンス 600Ωのマイクロフォンを、入力インピーダンス 600Ωの HAで受けるとどういうことが起こるでしょう?

インピーダンスは周波数によって変化します。スピーカーやダイナミック型マイクロフォンの中身はコイルですから、やはり周波数によってインピーダンスが変化します。通常は 1kHzに対するインピーダンスを公称インピーダンスとして表示しています。

つまり 1kHzに対しては 600Ωでインピーダンス・マッチングがとれているので問題無いのですが、周波数が下がってくるとマイクロフォンの出力インピーダンスが上がってくるので、ミスマッチとなり、レベルが下がってしまいます。つまり低域不足(ロー切れ)になるのです。従って低域でマイクロフォンのインピーダンスが上がっても、それ以上のインピーダンスで受けられるように、HAの入力インピーダンスを予め高めにしておくのです。

これは「どこ(の回線)を切っても 600Ω」という昔の放送機器(BTS規格)でも、マイクロフォン増幅器だけは入力インピーダンスが 5kΩだったことでもわかります。

実際には、マイクロフォン以外でもインピーダンス値は 1kHzに対する値を使います。いままで述べてきたインピーダンスはすべて 1kHzに対する値です。ただ一般の電子機器ではマイクロフォンほど周波数の影響を受けないので(可聴周波数範囲程度ではほとんど変化しない)、あまり問題にならず、実用上は無視してもかまいません。

(社内セミナー資料より)

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